忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

03

03


 職場の昼休み。
 お弁当をつつきながら、同期の瑠海が言う。

「引越ししたんよね」
「うん。ここもだいぶ近くなったし」

 胡桃が笑う。

「いいねえ、あたしも一人暮らししたいなあ」
「いや、むしろ家がちょっと恋しくなるけどね」
「そう?今度料理とか教えてよ」
「いいよ、言ってくれたらいつでも。来てくれたほうがむしろいいかも」

 瑠海が目を丸くした。

「そうなの?」
「隣の人がねえ……どうにも変なん」

 苦笑する胡桃に、「どんなん?」と瑠海が尋ねる。

「えー、なんかよくわからん。会う時大体酔っぱらってるし」
「なんやの、そんなもんどこでもいるっしょ」

 瑠海が笑った。

「来てみたらわかるて」

 胡桃が顔をしかめる。
 先輩職員が声をかけた。

「井上さん、午後から外回りだって」
「え、そうなんですか」

 げ、と胡桃は思った。
 何も準備が出来ていない。

「まあ、部長一緒だし、詳しくはそっちに聞いて」
「部長かあ……」

 胡桃が頭を伏せる。
 部長の麻生と一緒になる時の緊張が好きではなかった。先行き思いやられる思いに顔をしかめた。

「でも部長、井上さんのこと結構気に入ってそうだよ」
「ちょ、やめてくださいよ。そんなわけないじゃないですか」

 顔をしかめたまま言う胡桃に、「まあ頑張りな」と笑いながら部屋を出て行った。

「こんな昼休みに聞きたくなかった……」

 胡桃は顔を伏せる。
 瑠海は「ファイトぉ」と笑った。

PR

Copyright © 深呼吸の必要 : All rights reserved

「深呼吸の必要」に掲載されている文章・画像・その他すべての無断転載・無断掲載を禁止します。

TemplateDesign by KARMA7
忍者ブログ [PR]