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03
職場の昼休み。
お弁当をつつきながら、同期の瑠海が言う。
「引越ししたんよね」
「うん。ここもだいぶ近くなったし」
胡桃が笑う。
「いいねえ、あたしも一人暮らししたいなあ」
「いや、むしろ家がちょっと恋しくなるけどね」
「そう?今度料理とか教えてよ」
「いいよ、言ってくれたらいつでも。来てくれたほうがむしろいいかも」
瑠海が目を丸くした。
「そうなの?」
「隣の人がねえ……どうにも変なん」
苦笑する胡桃に、「どんなん?」と瑠海が尋ねる。
「えー、なんかよくわからん。会う時大体酔っぱらってるし」
「なんやの、そんなもんどこでもいるっしょ」
瑠海が笑った。
「来てみたらわかるて」
胡桃が顔をしかめる。
先輩職員が声をかけた。
「井上さん、午後から外回りだって」
「え、そうなんですか」
げ、と胡桃は思った。
何も準備が出来ていない。
「まあ、部長一緒だし、詳しくはそっちに聞いて」
「部長かあ……」
胡桃が頭を伏せる。
部長の麻生と一緒になる時の緊張が好きではなかった。先行き思いやられる思いに顔をしかめた。
「でも部長、井上さんのこと結構気に入ってそうだよ」
「ちょ、やめてくださいよ。そんなわけないじゃないですか」
顔をしかめたまま言う胡桃に、「まあ頑張りな」と笑いながら部屋を出て行った。
「こんな昼休みに聞きたくなかった……」
胡桃は顔を伏せる。
瑠海は「ファイトぉ」と笑った。
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